2025年10月 日本史上初の女性総理が誕生して間もない現在、高市氏自身も以前から言及していた「スパイ防止法」成立に、ネット内外から期待の声が上がっています。
しかし、私は1〜2年でのスパイ防止法の成立は少し難しいのではないかと思っています。
成立には様々な壁と懸念が予想されるからです。
以下、成立に向けて考えられる課題と懸念を整理してみようと思います。
「スパイ防止法」とは
スパイ防止法とは、国家の安全に関わる情報が国外に漏洩するのを防ぐための法案で、いわゆる「国家機密の保護」を目的としています。
日本はスパイ天国と言われて久しく、保守層からは、以前から「スパイ防止法は急務だ」と言われていました。
しかし、スパイ行為を禁止する法律が全くないわけではありません。
現行法でもある程度カバーされています。
自衛隊法 国家公務員法 刑法 特定秘密保護法 サイバーセキュリティ基本法 経済安全保障推進法(セキュリティクリアランス)などです。
今成立が望まれているのは、これらの法律を包括する新しい法律です。
成立に向けての課題は?
前述の通り、細分化された個別の法律が存在している以上、これらを無視して法律を作ることはできません。
例えば、「(スパイ防止法)第〇条第〇項 〇〇(〇法第〇条〇項〇号に基づき定めた〇〇をいう)は、〇法第〇条第〇項第〇号に該当する行為をしたときは~」のような書き方をしていく作業が必要になります。
それを上記6つの法律と齟齬が無いように作らなければいけません。
考えると、膨大な作業になることが想像できます。
そのため、チームを編成し、何か月にも渡りチェックと訂正を繰り返していくことになります。
しかし、今はAIがあります。
ある自民党議員は、「政府AIを作り、国会答弁に使えるようにすれば、官僚が膨大な資料から質問通告に答える資料を探す手間が省けるかもしれない」ということを言っています。
法令版AIを作り、関係法令全てを学習させ、新しく編成する法律との照らし合わせをすれば時間は大幅に短縮できるかもしれません。
ただ、このAI開発にも時間はかかるでしょうが・・・。
また、一番懸念されるのは野党からの抵抗です。
おそらく、日本国憲法 第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、…国政の上で、最大の尊重を必要とする。」を理由に法案成立阻止に動くと予想されます。
安倍政権時代に特定秘密保護法が成立した際も、この点が問題視され、国会前で大規模なデモが行われるなど大きな騒動になりました。
スパイ防止法成立にも同じようなことが起こることが予想されますので、事前に準備をしておく必要があるでしょう。
連立を離脱した公明党は憲法改正に慎重でした。
同じようにスパイ防止法にも慎重な姿勢かもしれません。
政府与党にいた公明党が成立阻止に回ると、野党時代の自民党のように影響力の大きい存在になることが予想されます。
他国との違い
他国のスパイ防止法は軍の存在が前提で作られており、軍や情報機関が保有する“特定秘密”をどう扱うかを明確に定義しています。
そのため、日本で同様の法律を制定する場合は、自衛隊法を基に設計されることになるでしょう。
しかし、自衛隊法はポジティブリスト(明示的列挙)方式が採用されており、他国のようなネガティブリスト(禁止事項列挙)方式とは異なります。
つまり、「何をしてよいか」を細かく決める形になっているため、できることが限定されやすいのです。
この仕組みのままスパイ防止法を作ろうとすれば、「実施可能な行為」を一つ一つ明記し、その都度国会で審議を行う必要が出てくるかもしれません。
結果として、法案作成のスピードや実効性に大きな影響を与える可能性があります。
今後どうするべきか
前述の課題や懸念が現段階で予想されることが理解されているならば、その一つ一つに対応できるよう、丁寧かつ慎重に事前に根回しをしていくことが必要になるでしょう。
想いが強いからといって強引に事を進めると、成し得ることも成し得なくなるかもしれません。
最後に
私はスパイ防止法に反対しているわけではありません。
私は普段からリアルの知り合いにも「日本は早く自衛隊を軍にすればいいのに」と言っていて、知り合いから「accel(ATA-info管理人)さんは右翼だから~」と冗談で言われることもあります。
ネットを見ていると「早くスパイ防止法を」「高市さんならすぐにやってくれる」といったような書き込みをよく目にします。
一般人の私が思いつくだけでもこれだけの課題があるのに、なぜそんなに楽観的な意見が多いのか理解できません。
政治は一つ一つの積み重ねです。
一足飛びに何かが良くなることはあり得ないと思います。
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<ツイッターの反応>
フィフィ
@FIFI_Egypt⬜️岩屋前外相、高市氏提案の国旗損壊罪に反対、スパイ防止法には慎重姿勢 SNSで岩屋氏への批判には…信念を持って政治活動しておりますので、一向に気にしておりません。批判は自由ですが…もはや批判とも言えないね。 news.yahoo.co.jp/articles/d3f34… 以前高市さんが国旗損壊罪を提案した時も反対したよね。


















